
STYLES with Ferraresi
日常に映る美学。
Ferraresiを持つ
人々の姿。
Ferraresi Director
Yasuto Kamoshita
1973年、イタリア・フェラーラの小さな革工房から始まったバッグ・革小物ブランド「Felisi(フェリージ)」。
半世紀受け継がれた職人技とタイムレスな美意識を背景に、2025年春、新シリーズ「Ferraresi(フェラレージ)」が誕生しました。
発祥の地フェラーラの街並みに着想を得たバッグは、このブランドらしい上質さと、多様なシーンに馴染むアノニマスなデザインが魅力。
ブランドゆかりの5名の日常やスタイルを映し出しながら、彼らとFerraresiの間に潜む親和性に迫ります。
憧れたひとの
スタイルを
取り入れて楽しむ。

鴨志田さんがゴルフをはじめたきっかけを教えてください。
友人に誘われたのがきっかけですね。当初はあまり興味がなかったんだけど、やっているうちにどんどんハマっていきました(笑)。スポーツは得意じゃないけど、カラダを動かすのは好きだったので、なにもしないよりはマシかなって。ぼくがはじめた頃はセベ・バレステロスや、ニック・ファルドといったレジェンドゴルファーが活躍していた時代でした。そうした選手たちのプレーを見ていると、やっぱり楽しそうだなってなるじゃないですか。それで次第にモチベーションが上がっていったんです。
ドレスコードをはじめ、ゴルフはマナーを重んじるスポーツだと思うのですが、そうした部分からの学びもありましたか?
正直いうと、あまりないんです(笑)。ゴルフはゲームであるとぼくは思っているので、勝ち負けが楽しさなんですよ。勝って興奮して、負けて悔しい思いをするのがおもしろいし、それが長く続けられる秘訣でもある。そうした中でマナーを学び、友人との付き合い方なども見えてくる。はじめて一緒にラウンドを回った方でも、距離がすぐに縮まったりするんです。それはゴルフの魅力的な側面のひとつですよね。


鴨志田さんが理想とするゴルフのスタイルはありますか?
ドレスコードがあるにせよ、むかしに比べればだいぶ緩くなっていると思います。そんなにハードなスポーツでもないので、アクティブな服装じゃなくてもいけるという意味では、自由度が高いと思うんですよ。時代によってゴルフファッションにも変化があって、ぼくがはじめたばかりの若い頃は、折り目がついたスラックスにスイングトップやカーディガンを合わせていて、街着がそのままゴルフウェアになっていました。70年代はベルボトムを穿いているひとがいたり、時代を反映したスタイルがそこにはあったんです。
ここ最近の自分は、タイガー・ウッズに代表するようなストイックで色も抑えめなスタイルをお手本にしています。PGAの選手なんかがそうですね。全身ネイビーであったり、白黒のモノトーンな色合わせをずっとしているんです。だけど、それもちょっとマンネリ化してきていたので、最近はすこしだけレトロなムードを取り入れています。
ここ最近の自分は、タイガー・ウッズに代表するようなストイックで色も抑えめなスタイルをお手本にしています。PGAの選手なんかがそうですね。全身ネイビーであったり、白黒のモノトーンな色合わせをずっとしているんです。だけど、それもちょっとマンネリ化してきていたので、最近はすこしだけレトロなムードを取り入れています。
レトロなムードというのは、具体的にどういったものになるんですか?
たとえば90年代のウッズのボリュームのあるシルエット。当時、2タックの太いパンツを穿いていたんですよ。若かりし頃のウッズってめちゃくちゃカッコいいし、いまの気分にもフィットする。あとはカーディガンや、チルデンセーターといったトラディショナルなアイテムを混ぜたスタイルも、なんだか気になっています。そんな格好も最近しているんです。
トラッドだけど、スポーティさも漂うスタイリングですね。
今日も黒とエンジ色を合わせて、彼に感化されたスタイリングを組みました。やっぱり憧れたひとのスタイルを取り入れて楽しむというのは、基礎だと思いますね。






クラシックを
如何にアップデート
していくか。

憧れたひとのスタイルを取り入れるというのは、日常のファッションにおいても同じですか?
そうですね。若い頃から先輩の着こなしを見たりとか、映画俳優、ミュージシャンの格好を真似したり、取り入れるっていうことをやってきました。絵を描くときにデッサンをするのと一緒で、それが学びになるんです。
鴨志田さんがファッションで影響を受けたひとが気になります。
ハリウッドスターのフレッド・アステアからはすごく影響を受けています。身のこなし、装い、スタイリングのコンビネーション。そのすべてが素晴らしい。ベーシックなんだけどさり気なく“捻り”を入れた着こなしが粋で、クールで、なおかつエレガントなんです。
服や靴、バッグも含めた身の回りの品々の選び方にも影響はありますか?
もちろんです。どんなものを着ているのかチェックして、それをどうコーディネートに落とし込んでいるかということも研究しました。ベーシックなんだけど、それを自分のものにしてしまうところがかっこいい。普遍的なものでも、他のひととはちょっと違う着こなしをしていて、らしさが滲み出ているんです。そこにアイデンティティを感じたし、そうした精神性に魅力を感じました。決して新しいものではなくても、定番を自分なりの解釈や距離感で着るっていうのがすごく大切なんだと学びましたね。
“捻りを入れる”という部分にそのひとらしさが表れるような気がするのですが、鴨志田さんご自身はどんなことを意識しながら日々コーディネートを考えていらっしゃいますか?
捻りというのはつまり、正統派な着こなしをズラすことだとぼくは思っています。教科書的な見本があった上で成立するもの。そういう意味では、トラッドやクラシックがそれに当たります。その基本をわきまえた上で、どう捻るかが技であり、個性であり、ユーモアでもある。自分の体型や性格などを知った上で、色合わせやサイジング、あるいはアイテムの組み合わせをズラしてみるんです。
ファッションの世界では「守破離」という言葉をよく耳にしますが、まさにそれをスタイリングで表現されていますよね。定番と呼ばれるアイテムでも、それをどの位置から眺めるかによって、解釈が変わる。その視点の置き方に個性が表れるような気がします。
定番と呼ばれるクラシックなものは、往々にして古臭くなりがちです。だけど、それを如何にいまの気分で着られるか、アップデートしていくかということが大切。それを形にするために、ときには大胆な変化も取り入れなければならないかもしれない。ぼくはファッションの作り手として、それを常に考えています。「こういうスタイリングの方法もある」という、新しい提案に気づいてもらいたいんです。
クラシックなものを懐古的な視点で眺めず、いかに同時代的に見つめるかということですね。
それをずっと考えていますね。過去に埋もれてしまい、いまは誰も手に取らなくなったクラシックもあります。けれど、それを掘り起こす作業が楽しい。かつては古臭く感じたものが、ふとした瞬間に新鮮に映ることもある。だからこそ、自分の古い引き出しを開けてみたり、ヴィンテージショップを訪ねて探してみたりするのもおもしろい。クラシックな魅力を持つものは、一度はタンスの肥やしになっても、また光を放つときがある。その輝きが失われないのは、流行に左右されない完成度を備えているからだと思います。




背負うことで
高揚感が湧いてくる
バッグ。

バッグについても伺いたいのですが、デザインや機能面で求める基準はありますか?
バッグは着こなしの風味を整える、あるいは味を変えるスパイスのようなものだと考えています。そういう意味では、アクセサリーに近いかもしれないですね。ただ、バッグとなると長く愛用したり、経年変化も楽しみたい。つまり、愛着が湧くものでありたいんです。
靴にも似たような感覚がありますよね。
靴はスタイリングの要としてすごく重要な要素で、足元が定番ばかりになると、そこにアクセントを効かせるのがバッグの役割になると思うんですよ。色や形でちょっと遊びたいというときに、バッグが役に立つんです。
Ferraresiのバッグも、まさにそうした効果を持っていますよね。今回の企画に出演いただいた方々も、「背負うだけでコーディネートが引き締まる」と話していました。
バッグは決してメインアイテムではないんだけど、存在感があるものって、それを持つだけで着こなしのポイントになる。そういう意味でFerraresiのバッグは、背負うことで高揚感が湧いてくるアイテムであることを感じます。
Ferrarersiディレクターとして、そうした部分はかなり意識されていますよね。
そうですね。レザーを使っているけれど、ありきたりにならないように意識しました。とくにこだわったのは色です。ただ難解な色を選ぶのではなく、誰もが自然に持てて馴染むカラーリングに仕上げています。おしゃれなひとたちに共感してもらえて、そうした方々のワードローブにハマるもの。それでいてオリジナリティを感じるものができたと思います。



ラウンドの際に必須となるゴルフシューズのほか、保冷性抜群で伝統のグリーンが格好良いSTANLEYの水筒がバッグの中に揃う
ショルダーやトートバッグは大きめで使い勝手もいいですよね。
もちろんそこも考えました。カバンは本来“ものを運ぶための道具”ですよね。仕切りやポケットが多すぎると、意外と使いづらい。なんでも放り込めてラフに使える方がぼくは好きなんです。ビッグトートはまさにそういう感覚ですね。ショルダーはフラップがあるぶん、出し入れがラクかといえば必ずしもそうではない。ただ、あのフォルムにはすごくこだわりました。もともと狩猟用の“ゲームバッグ”が原型で、カルチャー的な背景や歴史があるんです。それを襷掛けするスタイルがかっこよく、ヒストリカルな魅力を持っている。そのスタイルを提案したかったんです。
鴨志田さんがいちばん使っているのは、どのバッグですか?
ショルダーですね。トートもよくゴルフに持っていくし、荷物が多いときは結構使ってます。
FW25にリリースされる新作のバッグに関しては、どんなところにこだわったのか気になります。
自分が昔から使っていたお気に入りのワンショルダーのバッグをアレンジしました。男性も女性も使いやすいという点ではいまっぽいし、いまは荷物も少ない時代ですよね。あのくらいのサイズがちょうどフィットするし、かっこつけられるバッグだと思います。
ユニセックスということも意識されたんですか?
結果的にそうなったということです。いわゆる男性的なバッグって、いまっぽくないんですよ。堅苦しいし、重たいじゃないですか。だからソフトなデザインがいいし、それが結果的に女性でも持ちやすいということに繋がるんだと思います。
最後に、今後Ferraresiの展望を教えてください。
前職時代も含めると、Felisiとはもう30年近い関わりになります。そのぶん愛着があるし、イタリアの小さな工房や会社も数少ない存在になってきました。だからこそ応援したいという気持ちが強いし、これからもFerraresiを通してその魅力を発信していけたらうれしいですね。



鴨志田康人
東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、「BEAMS」を経て1989年に「UNITED ARROWS」の創業に参画。2007年に自身のブランド「Camoshita UNITED ARROWS」を立ち上げ、2013年にはアジア人として初のピッティ・イマジネ・ウオモ賞を受賞。現在はSS25にローンチしたFelisiのスペシャルラインFerraresiのディレクターとしても活躍し、シリーズのデザイン監修を通して現代的なエレガンスを提案している。

撮影協力
ブリック&ウッドクラブ
メンバーによるメンバーのための古き良きカントリークラブの原点を追求し、好奇心満点のメンバーたちが手作り感覚で作り上げたゴルフクラブ。















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